2013年04月13日

ささやかな平和のひとときを想う

さて、「ソラノカケラ」本編も無事完結したことですし次は後日談・・・なんですが、その前に単発もあげておこうかと。
単発と言っていながら「ソラノカケラ」設定引き継いでますがたぶんこれはこれだけで読めると思う。

内容的に下ネタです。セクハラあります。
絡んではいませんが父揉みはあります。

下ネタ、セクハラが苦手な方はブラウザバックすることをお勧めします。

・・・まああんまりエロくないんだがな。相手があのNAT(補足:ちっぱい)だし。

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2013/04/13 UP
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ささやかな平和のひとときを想う

 中立都市サンサルバシオンはその日、歓声に包まれていた。
 ISAFが長い間この都市を侵略し続けていたエルジアを退け、解放したからだ。
 解放されたことによる歓声は、戦闘が終了した夜明けから続き夜になっても静まらなかった。
 その街を歩く、3人の姿が。
 ブルーのパイロットスーツに、フライトジャケットを羽織った3人の男女。
 フライトジャケットの袖に貼られたベルクロのワッペンは2人が青と灰色で刺繍されたメビウスの輪、1人が雷とΩの文字を組み合わせたものだった。
「こうやって街中を歩くとどれだけここの住人が虐げられてきたかよく分かるな」
 メビウスの輪のワッペンを付けた男性が、呟くように言う。
「モビウス1の活躍のおかげだよ」
 同じくメビウスの輪のワッペンを付けた女性が隣を歩く彼―――モビウス1に言う。
「おいおいNAT、俺の活躍は何も言わないのかよ」
 Ωのワッペンを付けた男性が、不満そうに彼女―――NATに抗議した。
「だってオメガ11、作戦開始直後に対空砲の弾幕の中に突っ込んだし」
 それで脱出して、作戦が終わるころには自力で味方の救助部隊の前に姿を見せているのである。
 エルジアの小隊長らしき人物を一人引きずって。
 普通、それでもメディカルチェックやら何やらがあるはずなのにオメガ11は今こうしてモビウス1達と共に行動している。
 慣れたものだ、ということだろうか。
「いやあ、こういう時は一杯やりたいものなんだがなあ‥‥なあモビウス1」
 オメガのワッペンを付けた男性―――言わずもがな、オメガ11である―――が、モビウス1にそう声をかける。
「‥‥そうだな、たまには飲むのも悪くないか」
「オレも賛成!」
 モビウス1とNATの賛成の言葉を聞き、オメガ11は近くにいい店がないかと探し始めた。
 やがて、路地を少し入ったところに1件のバーがあるのを発見する。
「あそこにしねえか?」
 看板には「Dawn Purple」と書かれている。
「いいんじゃないか?」
 モビウス1も頷き、3人は店に入った。

 店の中は意外に静かだった。
 防音対策が施されているのだろう、外の喧騒はほぼ完全にシャットアウトされ、代わりに心地よいジャズがBGMで流れている。
 中には数人の客が。
 マスターらしき男性が、ちらり、と3人を見た。
「いらっしゃいませ」
「おう、ここは一見さん大丈夫か?」
 オメガ11が確認すると、マスターが「大丈夫ですよ」と応える。
「‥‥それに、お客様はISAFの方とお見受けしました。大歓迎ですよ」
 フライトジャケットのISAF軍章に気付いたのだろう。
 マスターの言葉に、3人はカウンター席に座った。
 NATを中心にして男性陣二人が彼女の両横に座る。
「ご注文は?」
「ワイルドターキーあるか?ロックで」
 オメガ11がろくにメニューも見ずに即答する。
「12年がありますが、それでよろしいでしょうか?」
「おう、大歓迎だ」
 かしこまりました、とマスターが応え、それからモビウス1とNATを見る。
「いかがされれますか?」
「俺はスノー・ホワイトで」
「んじゃオレはジントニック頼むよ」
 モビウス1とNATも注文を決める。
 注文した品が出されるのを待つ間、NATがスツールの上で足をぶらぶらさせている。
「NAT、お前意外といけるクチか?」
 オメガ11がそう訊くと、NATはうーん、と唸った。
「ジントニは色々思い入れがあるからね。自分でも時々作るよ」
 っていうか、カクテル作るの好きだし、と続ける。
「‥‥」
 きょろきょろと店内を見回し、彼女は首をかしげた。
「どうした?」
 モビウス1が尋ねると、NATは逆の方向に首をかしげた。
「んー‥‥ここ、初めてなんだけど既視感あるんだよね‥‥夢で見たのかなあ‥‥隣に、なんかすごく大切な友人が座ってた気がするんだけど、夢だったのかな」
 なんか不思議な感覚がする、と言うとオメガ11が「考えすぎだ」と返してきた。
「夢の話だぜそれ。あ、だがお前サンサルバシオンは初めてじゃないんだよな」
 NATがモビウス1に押し付けたゆっくり饅頭。
 ゆっくり饅頭の研究施設がサンサルバシオンにあり、希望者には希望する遺伝子情報を組み込んだゆっくり饅頭を繁殖させる、といったことも行っている。
 NATが、そうだねと頷いた。
「考えすぎだよね、ごめん、忘れて」
「お待たせいたしました」
 タイミングよく、3人の前に注文した品が出される。
「乾杯しようぜ」
 オメガ11が、提案してくる。
「何に?」
「そりゃー決まってるだろうが、サンサルバシオン解放を祝ってだ」
 ああ、そっかとNATが納得する。
「乾杯、する?」
「そうだな」
 モビウス1も頷き、グラスを持ち上げた。
「それじゃ、サンサルバシオン解放を祝って、」
『乾杯』
 3人が、かちん、とグラスを当てる。
 グラスに口をつけ、注がれた中身を喉に流し込む。
「くぅ〜、やっぱ任務後の酒はうまいぜ」
 そう言いながらワイルドターキーをあおるオメガ11に、早すぎず遅すぎずのペースでカクテルを飲むモビウス1。
 NATはゆっくりと、味わうようにジントニックを飲んでいる。
「‥‥」
 何か思うことがあるのだろうか、彼女は無言だった。
 そんな彼女の頭に、オメガ11が手を乗せた。
 くしゃっ、と髪を掻き乱す。
「うー‥‥」
 抗議するかのように、NATがオメガ11を見た。
「何すんの」
「いやあ、こんなめでたい時にお前静かだなーと思って」
 くしゃくしゃと彼女の髪をいじるオメガ11に、モビウス1が便乗する。
 男二人に頭をわしわしといじられ、NATが唸った。
「もう、二人ともいい加減にしてってば」
「んじゃもうちょいはっちゃけようかNAT」
 そう言い、オメガ11がボトルからワイルドターキーをNATのグラスに注ぐ。
「え?ちょ、ちょっと勝手に変なカクテル作らないでってば!」
「飲め飲め」
 再び、うー、と唸りNATがグラスを口に付ける。
「ったくオメガ11は‥‥」
 ぼやきつつも明らかにアルコール度数が上がったジントニック(+ワイルドターキー)を飲む。
 モビウス1も、そんなNATを酒の肴に再び飲み始める。
「おいNAT、」
 不意に、モビウス1が口を開いた。
「何?」
 不思議そうに、NATが訊く。
「前々から疑問に思ってたんだが‥‥お前、本当に女だよな?」
『‥‥はぁ?』
 NATとオメガ11の声が重なる。
「急に何言ってんの」
「つーかモビウス1、それセクハラの一歩手前だぞ」
 二人が抗議するが、モビウス1はやや赤くなった顔で追撃する。
「そりゃあ前のことがあるから男だとは思わんが‥‥そこまで洗濯板なのも滅多にいないからな」
「せ‥‥」
 洗濯板、とNATが絶句する。
 モビウス1の言葉に、オメガ11がふむ、と呟いた。
「確かに‥‥洗濯板っちゃ洗濯板だよな」
 そう呟き、彼はおもむろに手を伸ばした。
 後ろからNATの胸に手を回す。
「ふぇっ?!」
 NATが変な声を上げ、モビウス1が驚いたようにオメガ11を見る。
「ふむ‥‥いや、一応あるぞ、胸」
「ちょ、オメガ‥‥やめっ‥‥」
「お前、ブラジャー付けてないのか?‥‥ふむふむ、このサイズだとAでも余るか‥‥」
 そんなことを分析しながら、ちゃっかりNATの胸を揉んでいる。
「んっ‥‥だから、オメガ‥‥やめ‥‥あっ‥‥」
 顔を真っ赤に染めながら、NATが喘ぐ。
 それを少し呆然と眺めていたモビウス1だったが、ようやく我に返りオメガ11の手を掴んだ。
「オメガ11、やり過ぎだ!」
「‥‥ちぇ、バレたか」
 そんなことを言いつつ手を放すオメガ11。
 しかし、彼のセクハラはそこで終わらなかった。
「NAT、女って言うのはな、もうちょっと胸があってもいいものなんだぜ。もうちょっと胸をふくらませたらおじさんのところへおいで」
「オメガ‥‥」
 NATが振り返り、オメガ11を見る。
 次の瞬間。
「このオープンスケベがっ!」
 彼女のアッパーが、きれいにオメガ11の顎に決まった。
「ぐふぅっ!」
 顎を押さえて悶絶するオメガ11。
「お、おいNAT‥‥」
 周りの客の視線を気にしつつ、モビウス1が彼女をなだめる。
「人が気にしてるところを遠慮なく触って‥‥」
 どうやら、彼女も自分の胸に対してコンプレックスを持っていたらしい。
「‥‥やっぱ、オトコって胸大きい方がいいのかなあ、」
 やや、沈んだ口調で彼女が呟く。
 それに対してとったモビウス1の行動は意外なものだった。
 立ち上がり、カクテルの入ったグラスを高々と掲げる。
「貧乳はステータスだ!希少価値だ!」
「実にその通り!(クィッ」
 店内に響くモビウス1の声に、テーブル席にいた別のグループの一人が立ち上がり、人差し指でクイッとメガネを上げる。
「お、お前もそう思うか?」
 まさか反応があると思っていなかったモビウス1が驚きつつもその人物に声をかける。
「勿論。女性は貧乳こそ魅力があるのです」
 そう熱く語る男性に、モビウス1はグラスを差し出した。
「まさか同志に会えるとは思わなかった。名前は?」
「善知鳥 心矢と申します」
 そう言い、男性―――善知鳥はモビウス1のフライトジャケットに付けられたワッペンを見た。
 ほう、と小さく呟き、彼もグラスを差し出す。
「この街を救ったメビウス1とお知り合いになれるとは光栄です」
 そう言って、カツンとモビウス1のグラスと自分のグラスをぶつける。
「ほんと、お前も有名になったもんだよな」
 後ろから何とか痛みから立ち直ったオメガ11が茶化す。
「だよねー」
 NATもオメガ11を殴ってすっきりしたのか彼に同意する。
「あなた方も、昨日の戦闘に?」
 善知鳥がそう尋ね、NATのフライジャケットにもメビウスのエンブレムが付いていることを認識して言い方を変える。
「いや‥‥あなたが、メビウス1の片割れということですか」
「ああそうか、意識してなかったけどそうなるかなあ」
 メビウス1とはモビウス1一人に当てられたコールサインではないという認識。
 後席である以上、NATもある意味メビウス1ということか。
 善知鳥が、ちら、とNATの胸を見た。
「これは素晴らしい貧乳。いや、無乳と言った方がいいですか」
「‥‥なんか全然褒められてる気がしないんだけど」
 そう言いながらNATは残っていたジントニックを飲み干し、おかわりを注文する。
「触った感じだとアレだが、実は『脱ぐとすごいんです』を希望するなあ」
「エロオメガは黙ってて!」
 ぴしゃり、とNATに叱られてオメガ11が「はい‥‥」と黙る。
 いつの間にかモビウス1は善知鳥の隣の席に座り、貧乳談義を始めている。
「‥‥ほんと、あいつ貧乳好きだよなあ‥‥」
「むー‥‥」
 スツールに腰掛けてむくれるNATに、オメガ11が声をかける。
「NAT、」
「何、オメガ11」
 不思議そうに、NATがオメガ11を見る。
「そんなにも気になるか?」
「そりゃあ、一応オレだって女だよ、もうちょっとボリュームあってもいいかなあとは‥‥」
 やっぱりぺったんこだからなあ、と自分の胸のあたりをぺたぺた触りながらNATはぼやいた。
「胸は揉めばデカくなると聞いたぞ。ほら、おじさんの胸に飛び込んでおいで」
「‥‥オメガ11のバカ!」
 オメガ11の発言に、NATはぷいっと顔をそむけた。
「ちくしょう‥‥振られた‥‥」
 顔をそむけ、モビウス1に視線を投げる彼女にオメガ11はがっくりとうなだれた。
(‥‥やっぱり、モビウス1のことが好きなんだな)
 何も言わないし、そう言うそぶりも見せないが薄々感づいていた。
 彼女は、モビウス1に好意を持っている。
 何度も共に死線を潜り抜けてきたから、だけではないだろう。
 昔は3人でつるんでよく悪戯をしていた。
 モビウス1が引っ越して覚えていないのか彼とNATの間に距離は感じるが、最近その距離が近づいたような気がする。
 そこまで考えて、オメガ11はふと、気が付いた。
 この記憶に、違和感を感じる。
 本当に、3人だったのか?
 今目の前にいるNATは幼馴染ではないのか?
 そんなことを考えていると、NATがくるりと振り返った。
 何か思いつめた様子で、オメガ11を見る。
「おう、どうした?」
 そう問いかけると、彼女は躊躇いがちに口を開いた。
「オメガ11に‥‥頼みがあるんだ」
「なんだ?」
 ここは冗談で返すべきところではない。
 そう判断したオメガ11は、グラスをカウンターに置き、NATを見た。
 手にしたグラスに視線を落とし、NATが呟くように言う。
「‥‥オメガ11はモビウス1の親友だよね?」
「ああ、そう思ってる」
「だったら‥‥オレがいなくなっても、モビウス1を支えてくれるよね?」
 何、とオメガ11が呟いた。
「どういうことだ」
「オレはいつまでも一緒にいられない。いつか、オメガ11やモビウス1の前から去らなきゃいけない時が来る。だから‥‥オレがいなくなったら、モビウス1を支えてあげて」
 思ってもいなかったNATの言葉。
「いなくなる、って‥‥」
 そう問いかけた自分の声があまりにもひどく、オメガ11は顔をしかめた。
「とりあえず、理由を話せ」
「‥‥ごめん、それは言えない」
「‥‥そうか、」
 そう言い、オメガ11は手を伸ばした。
 NATを抱き寄せて頭をポンポンと叩く。
「言いたくなったら遠慮なくおじさんに言いなさい」
「‥‥オメガ11のバカ」
 そっとオメガ11を引き離し、NATは笑った。
「ちょっとすっきりしたよ」
「そうか、ならそんなお前にこいつを奢ってやろう」
 そう言ってオメガ11が何かを注文する。
 その一方で、モビウス1は善知鳥と熱心に話し込んでいた。
「お前にとって貧乳はどれくらい以下が基準なんだ?」
「そうですね、やはりA以下ではないかと」
「だろうな。で、あいつなんだが‥‥予想としてはどれくらいだと思う?」
 ‥‥貧乳談義に余念がない。
 ちら、とNATを見た善知鳥がそうですね、と呟いた。
「服越しでよく分かりませんが、確実にA以下ですね」
 いいじゃないですか、狙い目ですよと善知鳥に言われ、モビウス1はそうか、と嬉しそうに笑った。
「あのサイズを愛でるもよし、サイズアップを図るもよし、の逸材だろ?」
「私はあのサイズのままでいてもらいたいですね」
「俺もだ」
 あのサイズの魅力はやっぱり貧乳好きにしか分からんよなあ、などと話している。
 そんな二人の視線が、ちょうど善知鳥のグループが注文していた品を持ってきたウェイトレスに流れた。
 NATも外見が少々男っぽくてパッと見には迷うが、このウェイトレスもちょっと見ただければ性別の判別はつかない。
 ただ、NATに比べて胸のボリュームはあるので女性と判別しやすい。
 二人の話題は、自然に彼女の胸のサイズについて流れていった。
「あれくらいはどうですか?」
「うーん‥‥」
 パッドで底上げしている可能性を考慮して、C前後か、とモビウス1が唸りつつ答えを出す。
「うーむ、あのサイズはちょっとな‥‥せめてBなら許容範囲なんだが」
「許容範囲?とんでもない、貧乳がいいならやはりA以下でしょう!」
 なに、とモビウス1が善知鳥を見る。
 どうやら意見が分かれたらしい。
「確かにA以下が理想かもしれんが、B前後は妥協案だろう」
「いいえ、断じてA以下しか認められません!」
 善知鳥がそう言うと、モビウス1もなんだと、と返した。
 同時に二人が立ち上がり、互いに腕を掴みあう。
「‥‥やる気か?」
「そちらこそやる気ですか」
 その瞬間、二人の横を影がよぎり―――
 二人の頭に何かが突き付けられた。
「おい、あんたら喧嘩は外でやってくんねえかな」
 その声に、そろそろと視線をずらすとそこに立っていたのはウェイトレス。
 ただしその手に握られているのは2挺のイングラム。
「しかも、聞くつもりじゃあなかったが聞けば俺の胸か?」
「いや、俺は連れの胸の話をだな‥‥」
「私も、あなたの胸のことなど‥‥」
 しどろもどろになってモビウス1と善知鳥が弁解する。
「ああ、どうせ俺の胸はあんたらにとっちゃ許容範囲外だろうよ。でもな、貧乳を気にしてる奴だっているんだぜ?」
「あー分かる分かる」
 いつの間にか店内にいる全員がモビウス1達を注目している。
 その時、カウンターに背を向けていたNATに声がかけられた。
「お待たせしました」
 マスターはこの話に興味はない、といった様子でグラスを置き、次の注文の品を作り始める。
 NATが振り返って金色の液体が注がれたグラスを手に取る。
「いいの?」
 おごってもらって、と彼女が確認すると、オメガ11が飲め飲めと勧めてくる。
「んじゃ、お言葉に甘えて」
 そう言って、量がそんなにも多くないことも相まって彼女は一気にあおった。
「え?お、おい一気って‥‥?!」
 オメガ11が慌てて彼女に手を伸ばす。
 NATの体がぐらり、と傾く。
「お、オメガ‥‥」
 倒れる前に辛うじてグラスをカウンターに戻し、彼女はオメガ11を見た。
「何頼んだの‥‥?」
「何って、アースクエイクだ。アブサンとジン、ウィスキーのカクテルだがふつう一気飲みするものじゃないぞ!」
 倒れ込むNATの体を受け止め、彼はしまったな、と呟いた。
 まさか一気飲みされるとは思わなかった。
 ネタで頼んで、一口飲んでむせるところを笑ってやろうと悪戯心に思っただけだ。
 アルコール度数約50度のこのカクテルはよほどのウワバミでないと飲み干せない。
「うー‥‥」
 オメガ11の腕の中で、NATが唸る。
 視線をめぐらせれば腕を掴みあったモビウス1と善知鳥がイングラムを突き付けられている。
「やば‥‥」
 これは店を出るべきだろう、と結論付ける。
 NATを担ぎ、オメガ11はモビウス1に歩み寄った。
「お前何やってんだ!」
 ごん、と脳天に拳を叩き込む。
 くらり、とモビウス1がよろめいた。
 その首根っこをすかさず掴み、引きずり始める。
「マスター、騒がせちまって悪いな。俺ら帰るわ」
 そう言ってちら、と善知鳥を見る。
 彼はというとウェイトレスに凄まれておろおろしている。
 それを見て、オメガ11はマスターの方を見なおした。
「俺らの飲み代、あのトリにツケてくれや」
「‥‥?かしこまりました」
 マスターが一瞬、不思議そうな顔をするがすぐに了承する。
 モビウス1をずるずる引きずりながら出口に向かい、オメガ11はカウンターの隅に何かがあるのを見つけた。
 初めはマッチかと思っていたが、マッチにしては箱が大きい。
 よく見るとそれは白と赤でデザインされた箱で、「梅ぼし純」と書いてある。
 そう言えば酔い覚ましには梅干しがよかったよな、と思い出し1箱手に取る。
「マスター、これもあいつにツケといてくれ」
「かしこまりました」
 ありがとうございました、というマスターの言葉を背に、3人は外に出た。
 喧騒はまだ止まない。
 だが、戦争はまだ終わっていない。
 NATの言葉の意味も気になる。
「‥‥ま、考えていても仕方ないか」
 そう呟き、オメガ11は歩き出した。

  ◆◇◆  ◆◇◆

「散々な目に遭った‥‥」
 ウェイトレスの説教から解放された善知鳥が、会計を頼む。
 その金額を聞いたとき、彼は目をむいた。
「なんで‥‥?!」
「ISAFの方がお客様にツケてくれ、ということですので」
「どうした善知鳥、」
 かくかくしかじか、と善知鳥が連れに説明する。
「ああ、それはお前も悪いからな。払っとけ」
「‥‥経費で落ちればいいのですが」
「おいおい、自分の飲み代は自分で払うのが男ってもんだろうが」
 かなり歳を重ねた男性が善知鳥を諭す。
「しかし五十嵐老、これは―――」
「お前さんが撒いた種だ、自分で刈ることだな」
 とほほ、と善知鳥がうなだれ、そして自分の財布から提示された金額を支払った。

「‥‥で、安曇さん?これ経費で落とせませんかねえ‥‥」
「ムリですハート

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モビウス1と飲んでた善知鳥さん+エピローグの集団はゆっくり饅頭の研究を行っている綾小路製薬の面々です。
というのが「ソラノカケラ」上の設定ですが、元ネタは「スカイブルー」の色彩戦争対策期間の綾小路製薬より。

・・・スカイブルー・・・なんで打ち切られたん・・・。・゚・(ノД`)・゚・。 うえええん

NATのちっぱいエピソードに関してはまだあります。
現在あいほんでもちもちと執筆中。
posted by 日向 夏樹 at 00:42| Comment(0) | AC04二次単発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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