チョイスしたのは「天使の福音」です。
・・・
ぶっちゃけ、惚気ています。スカイアイが。
んでもって衝撃の事実!?が発覚?します。
まさかのあの人登場するよ!
個人的にはこのエピソード好きなんですけどねえ・・・
タイトルの「天使の福音」は読むと分かります。多分。
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2014/07/02 UP
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天使の福音
大陸戦争終結後、モビウス1はISAFを退役、民間の航空会社に再就職していた。
その直後に発症したPTSD、医者には戦争の極限状態と狂気が原因だろう、完治には時間が掛かると言われていた。
「……」
病院から帰宅したモビウス1がため息をつく。
どさり、とソファに身を沈め、天井を見上げる。
「違う、」
医師は戦争のトラウマだと言っていたが、自分がそんな簡単なことでPTSDになるわけがない。 もっと大きな理由―――
「……NAT、」
メビウス1として出撃した最後のミッション。
そのミッションで、彼は最愛の人物を喪った。
前日に聞かされた彼女の死の運命。
覆せないと言われたが、それでもモビウス1は抗った。
彼を庇って被弾し、脱出不能になった彼女だったがモビウス1の機転で脱出には成功していた。していたはずなのだ。
それなのに。
彼女は還って来なかった。
救命ボートに、彼女が身につけていたペンダントだけが遺されていた。
そしてそれは、チェーンと中の石を取り替えられて、モビウス1の首にかけられている。
「……なんで、お前だったんだ」
彼女がいなくなる前日、聞かされた真実はモビウス1の想像を遥かに超えるものだった。
異世界、異次元空間の存在。本来なら彼女は人間ですらなかったということ。
ネットの海に漂っていた「自我のある」AI―――もはや、それは生命体と呼んでも差し支えないだろう。
にわかには信じられなかったが、事実なのだろう。
ペンダントを取り出し、彼はペンダントトップを手の上で転がした。
彼女が遺したのはこのペンダントと1枚のDVDのみ。
しかしDVDに遺されたビデオレターは観るのが辛く、一度観ただけだった(それに動画の片方はお子様NGの過激な内容だった)
「……俺は、どうしたいんだろうな」
運命を覆せず、彼女がいない今、何を支えに生きて行けばいいか。
それとも―――
「どこかで、あいつが生きていると思ってるのか俺は」
彼女の遺体すら見つかっていないのである。もしかすると、という希望にすがっているのではないのだろうか。
そんなことを考えていると、不意に携帯が鳴った。
だが、出る気にもなれず放置する。
―――と、ゆっくり饅頭が跳ねた。
器用に携帯を咥え、大きく跳ね上がり、
「ぐはぁっ!!」
モビウス1の腹に勢いをつけて着地した。
「電話、」
「分かってるわ!」
彼女の遺伝子情報を組み込んだゆっくり饅頭、性格も割と似ているのではないだろうか。
渋々電話を受け取り、発信者を見る。
「……スカイアイ?」
退役する際に確かにスカイアイから携帯の番号を交換したが、まさか本当にかけてくるとは。
通話ボタンを押し、モビウス1は携帯を耳に当てた。
「……もしもし?」
《ああ、モビウス1、久しぶりだな》
電話の向こうのスカイアイの声が懐かしい。
「スカイアイか、どうしたんだ?」
《いや……な、元気にしているかと思って》
スカイアイの言葉に、モビウス1はどう答えればいいか、と迷った。
まさかPTSDですと素直に言うわけにもいかず、かといって元気だと答えることもできず、沈黙してしまう。
その沈黙を答えと取り、スカイアイは電話の向こうでため息をついた。
《大陸戦争の後遺症か。と言いたいが違うな……NATのことか》
簡単に看破され、モビウス1はそうだと答えるしかできなかった。
《だが、まだ戦死と確定したわけじゃないだろう、何処かに漂着した可能性も》
「そんな慰め、欲しくない」
モビウス1がそう言うと、スカイアイは「すまない」と素直に謝った。
《まあそういうわけなんだが、一度うちに遊びに来ないか?》
「は?」
唐突なスカイアイの申し出に、モビウス1が素っ頓狂な声を上げる。
「なんだいきなり」
《マイハニーとマイエンジェルが君に会いたいと言っててな。それにマイハニーの作るミートパイは絶品で、君にも一度食べてもらいたい》
「要するに惚気か」
他人に嫁と娘を紹介するのにマイハニーとマイエンジェルは痛すぎる。
それに、NATがいない今、他人の幸せそうな家族を見るのが辛い。
そんな要件じゃ行かんぞ、と言おうとしたモビウス1だったが、次のスカイアイの言葉で迷うことになった。
《ミートパイ云々は冗談だがな。実はマイハニーはカウンセラーの資格を持っている。退役時のお前の様子を考えると絶対引きずっているしPTSDあたり発症しているんじゃないかと見越しての上だよ》
「なんでそこまで」
《俺は君を世話したんじゃない、君が俺を世話してくれたからな。これ位の援助はするべきだと思っている》
スカイアイだけではない。モビウス1に助けられた人間は数多く存在する。
確かにモビウス1は多数の敵を「殺した」存在ではあるだろう。だがその分「助けられた」人間も多いのである。
だから、ISAFで彼を知る人間の多くはNATの失踪に心を痛め、できることがあるなら手助けしたいと思っていた。
そうか、とモビウス1が呟いた。
《とりあえず、一度顔を出せ。マイハニーも喜ぶ》
「……その、マイハニーは誰に対してもそう紹介しているのか」
思わずツッコんでしまった。
え?とスカイアイが電話の向こうで首を傾げた―――ようだった。
《え、マイハニーはマイハニーだろ》
「……痛いぞ、スカイアイ」
そう言ってからふ、と、笑う。
「そこまで言ってくれるなら、行かない方が失礼だよな。お邪魔させてもらう」
《そう言ってくれると思った》
スカイアイが嬉しそうにそう言い、日時の確認をする。
《それでは、楽しみにしているぞ》
その言葉で、スカイアイは電話を締めくくった。
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スカイアイ、痛い。
というか、うちのスカイアイは・・・なので痛いんです。痛いんですってば。
んでもってゆっくり饅頭仕事しすぎだwww
しかし謎なのはモビウスの家は一体どういう構造なのか。
いや、建築業界に飛び込んだもんで結構気になってね・・・
ワンルームのアパートじゃない。でも一軒家で一人暮らしってのもあんまり考えられない。
大陸戦争の英雄だし、もしかしたら結構いいマンションに住んでたりして・・・
とかちょっと思ってみたりする。
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